先週、妻と私は、NHK衛星チャンネルで放映されたドキュメンタリー映画にすっかり引き込まれていた。その映画は、2014年作のSilenced(強制された沈黙)で、米国が内部告発者に何をしているかがテーマだ。映画には、とても知的で愛国心の強い3人のアメリカ人が出てくる。彼らはそれぞれCIA、NSA,米国法務省の職員だったが、一人は、米軍が水責めの拷問を行っていることを知り、それを告発した。もう一人は、NSAがアメリカ市民を対象にした監視活動について、告発を行った。
映画の途中、夜9時35分頃、電話が鳴ったので、妻が立って受話器を取ると、読売新聞の世論調査の電話だった。機械ではなく、生きた女性の調査員だった。調査は基本的に安倍首相のさまざまな政策に関するものだった。調査員の仕事は、複数の選択肢を伴う質問をすることだった。例えば、消費税軽減税率について、1)生鮮食品のみを対象とするべきか;2)生鮮食品と加工食品の両方を対象とするべきか、という質問があった。妻が「そもそも食べ物に課税してもらいたい人っているの?」と訊いたところ、女性調査員は、「どちらかというと2番ですね?」と言うので、妻は「そうですかね?」と答えた。すると調査員は「答えは2番とさせて頂きます」と言ったそうである。
この世論調査の結果は12月6日に印刷された。2番と答えた人は61%で、1番と答えた21%を大きく上回ったそうだ。その他、食品以外にも軽減税率を適用するべきと答えた人が55%で、適用すべきでないが33%。軽減税率導入に賛成が58%、反対が31%だったと書いてあるが、妻はこれらの2つの質問はされなかったそうである。
妻がめでたくも「無作為に選ばれた回答者」となったのは、今回が初めてだった。このような調査のやり方が100%公正でないことは、それまでにもテレビで世論調査の結果を見てわかっていたものの、今回の妻の経験は、こうした世論調査が誤解を招きやすいものであることの証明となった。
テレビに戻ってドキュメンタリー映画の続きを観てみたら、アメリカの主要メディアは、その3人の内部告発者たちをさんざん非難攻撃し、まるで犯罪者に仕立ててしまった。ひとりは投獄された。
過去5年の間に、世界各地から約10名の人が、私が何十年も前に一緒に音楽をやっていた、今は故人であるミュージシャンについて質問をしたい、と言ってメールを送って来た。彼らのほとんどが、ミュージシャンについて伝記を書いていると言った 。調べてみると、大学の先生や雑誌の編集者をやっている人もいるのだが、彼らは、リサーチ能力が非常に乏しいか、iphoneから私に質問メールを送るのに忙し過ぎて送信する前に私のウェブサイトを見る暇もないか、どちらかのようだ。メールを送って来たうちの一人は、私が彼の質問に答えた後で、「あなたの演奏楽器は何ですか?ギター?」と尋ねてきた。私は彼に私のウェブサイトのリンクを返信し、ご自分の目で確かめるよう親切に促した。
自称「物書き」の彼らは、入手したおそらく信憑性のないオンライン情報について何らかの確証を得るために私に連絡を取ってきたわけだが、自分の身元も詳しく明かさず、質問を私にしている理由も説明しない。本が出版された暁には一冊送ってくれるのかも言わないし、私にとっては藪から棒でしかない質問に時間を割いて答えてやっても金を払う気はさらさらない。彼らの書いた本をお金を払って買う人たちは、全く気の毒だ。どうせ、ろくな本にはならないだろう。
私たちは、見かけは真実、という不正確な情報に注意しなければならない。世界にはそれが溢れている。